雑KiN3-改

ここは自分にとっての過去ログです。すなわち、他人にとっては単なるゴミ。

 「封建制の文明史観」(PHP新書 ASIN:9784569704708)読了。封建制は諸悪の根源という通説に対する意義表明ということで始まる。「封建的」というのは貶し言葉として使われている印象があるので気を惹かれて購入したのだが、実は購入したのは昨年秋。積読の山に埋もれていた。


 モンゴルに対抗しえたのは日本とヨーロッパとエジプトで、それらは封建制の地だった、という話で口火が切られる。期待は高まるのだが封建制についての議論の歴史を延々と述べて終わってしまう。知りたかったのは封建制なら何故負けなかったのだと言うことなのに、それについては殆ど話が無い。結局、良いのだか悪いのだがはっきりしないで終わる。ただ、「封建制」と言う言葉が指すものがはっきり定義されないで論争されてきたと言うことだけは良く判った。


 封建制というと親分が子分に褒美として土地を与える。子分はそのひいきに報いるために働くと言うのが一般的な印象だと思う。読みながらそれを思い出していると、会社もそうだなと思い至った。上司は自分に逆らわないで働くのをちょっと昇格させて自分の下で働かせる。知識があろうが能力があろうが気に入らないのは昇格する機会を与えない。実力主義なんてことを言っているが、実際に実力主義なら全員を選考して水準を上回った者なら昇格させるようにすればよいし、自分の出身の部署以外であっても実力があるなら十二分に仕事をこなせるはずだからサイコロで赴任先を割り当てても大丈夫だろう。いずれもやらないことには延々と釈明しているが下っ端は見抜いているのだなぁ。


 などと思っていたのだが筆者は「封建制」は必ずしも悪くないという立場を取る。会社の例のようなのも封建制と見做した場合、どのように解説するだろう。最初に「封建制」の定義を立ててから定義にあわないとするだろうか、それとも仮に認めて検証に入るだろうか。尋ねてみたいものだ。